M-プロジェクト 私たちの未来はここから広がります。

消火器のリサイクル

より安全で、より使いやすく、そして環境にも配慮したエコ消火器

丸山式自動消火器

丸山式自動消火器

創業1895年。丸山製作所は、日本ではじめて消火器を製造販売した企業です。
一世紀以上にわたって「命を守る」道具の機能性と安全性を追求し、1981年からはリサイクル消火器のしくみを実現しています。
この実績ある取り組みを「消火器のエコ基準」として(財)日本環境協会にご提案し、現在の「消火器エコマーク認定基準」につなぐ橋を架けたのも私たちでした。

消火器リサイクルへの取り組み しくみ エコ消火器ができるまで、さらに、これから。

消火器リサイクルへの取り組みをリードしています

リサイクルをはじめるきっかけ
消火器

消火器には耐用年数の目安があります。法的には耐用年数表示の義務はありませんが、丸山製作所では安全確保のため、(財)日本消防設備安全センターの調査に基づき、一般用消火器の場合「8年」という期間を設定しています。
日本国内で、1年間に出荷される消火器の台数は約400万台。そして、そのほとんどが使用されることなく交換時期を迎えます。
もちろん、使用されることがないに越したことはありません。しかし、「使い捨て」は環境への負荷につながります。リサイクルへの取り組みは、「消火器の安全」と「環境への配慮」という2つを思ってのことでした。

ABC粉末消火器の薬剤をリサイクル

容器である鉄などは、もともとリサイクルされていた消火器。しかし、その中身の消火薬剤は、埋め立て処分による廃棄の道を辿っていたのです。
現在、もっとも普及しているABC粉末消火器の「ABC」は、消火対象を表しています。Aは普通火災、Bは油火災、Cは電気火災への対応を表しているのですが、この3つの要素を満たす粉末消火薬剤は、おもにリン酸水素アンモニウム(リンアン)と硫酸アンモニウム(硫アン)で構成されています。
硫アンは化学処理による副産物として生まれます。その一方で、リン鉱石という「天然資源」に膨大な電力を費やして作り替えられるのがリンアンです。
リンアンをリサイクルすることは、原料として大切な天然資源を守るだけでなく、電力の節約にもつながります。

「リサイクル剤40%以上含有」の基準を満たした消火器にはエコマーク

消火器にはエコマークが設定されるようになりましたが、そもそもこのエコマークの基準を設定するべく最初に動き出したのが丸山製作所です(平成15年12月、日本環境協会認定)。
この「リサイクル剤40%以上含有」というのは、中に充填されているABC消火薬剤がリサイクル剤を40%含んでいることを表しています。これは非常に高い数値で、それだけ消火器のリサイクルを実施していないと実現できない数値です。

エコマーク認定シール

このようにエコ認定された消火器には、エコマーク認定シールが貼付されています。
このシールが貼られている消火器は当社の回収システムで回収され、再びリサイクルが行われます。

「ミレニアム・プロジェクト」の一環として直接法を開発

リサイクルをはじめた当初、丸山製作所では水に薬剤を溶かす「溶解法」を用いてリンアンの抽出を行っていました。
やがて、政府の「ミレニアム・プロジェクト」の一環として資源のリサイクル技術の開発が進められ、新技術として登場したのが、次にご紹介する「直接法」です。

ABC消火器剤リサイクルシステムの流れ

(1)廃消火器を回収

廃消火器は、出荷、流通時の販路を逆流して回収されます。

回収された消火器

回収された消火器

(2)ABC粉末消火器の選別とリサイクル不適合品の排除

(3)ABC消火薬剤の取り出し・かくはん・ふるい

専用のマシンで消火薬剤を取り出し、その薬剤を写真上部のミキサーでかくはんします。
その後、ふるいにかけて、異物の除去や粒子のチェックを行います。

消火器から取り出された消火薬剤のミキサー

消火器から取り出された消火薬剤のミキサー

(4)蛍光X線装置によるサンプリングと分析

不純物の元素について約20種類ほどの定量分析やリンアンの割合等、成分内容の把握と材質の合否判定を行います。

(5)バージン剤調合比率の計算と調合・均一混合化

分析試験に合格したものを薬剤原料とし、この成分・量に合わせて追加調合するバージン剤(リサイクル剤に対し、新規原料から製造した薬剤をバージン剤と呼んでいます)原料の成分を計算します。次にリン酸水素アンモニウムなどバージン薬剤を粉砕し、薬剤原料とかくはん・混合します。

(6)各種添加剤投入・重合反応・混合・加熱・冷却

ABC消火薬剤は吸湿すると固まるという性質があるため、各種添加剤の化学反応を利用し、炉の中で粒子のひと粒ひと粒にシリコンコーティングを施します。
また、法の規格に準じた消火剤への着色も同時に行います。

※全消火器メーカーは、ともに同一範囲の着色を義務づけられています。この着色は安心な薬剤の証となり、色の種類も定期的に変わってきました。

消火薬剤を製造する反応炉

消火薬剤を製造する反応炉

(7)ふるい・サンプリング・分析・製品化

粒度分布や分粒含有量のチェックを工程ごとに繰り返し行い、最終チェックで合格した薬剤のみが製品化に向かいます。

完成した消火薬剤の充填工程

完成した消火薬剤の充填工程

エコ消火器ができるまで、さらに、これから。

西宮 眞

西宮 眞
マルヤマエクセル株式会社
取締役

リサイクル剤の製品化においてもっとも苦労する点は、炉の中で重合反応(化学反応)を完結させるということです。リサイクル剤は、さまざまな条件が微妙にからみあって、最終的な粒度分布が決まるからです。

狙いの粒度分布と含有量を満たしていれば成功するというものでもありません。温度を上げすぎると薬剤の分解につながりますし、添加剤の量によっても重合度が変化します。
さらに重合反応が正しく進んでいないと、薬剤の流動性も変わります。そうなると、例えば薬剤を放射した際に、消火器の中に残る薬剤が多くなる可能性も出てきます。
ポイントは、ひとつの工程ごとに「均一な品質」にしておくことでしょうか。安全性と品質向上という点で、毎日が新しい取り組みです。

藤田 育功

藤田 育功
マルヤマエクセル株式会社
技術設計係

廃消火器を回収してリサイクルするわけですから、どんな薬剤がどのような状態で入っているかわかりません。それを自分たちでチェックして成分内容を把握し、バージン剤と合わせていくところが丸山製作所ならではのノウハウになります。 このノウハウを蓄積して今後に役立てて行きたいと考えています。

今後は、さらに次世代のエコ消火器等の開発に取り組むなど、防災部門の活動を通して社会に貢献して行きたいと考えています。


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