霧を作るポンプの技術、風を起こす送風機、走行するための駆動システム、複雑なシステムの組み合わせであるステレオスプレーヤは、水と空気に関する製品を開発し続けてきた丸山製作所が持つ豊富なノウハウの集大成といえます。
ここでご紹介するのは、丸山製作所が最初のステレオスプレーヤを世に送り出して38年、業界のトップメーカとなるまでの物語です。
ステレオスプレーヤとは、果樹園に農薬を散布する機械のこと。霧状の薬剤を、強力な送風機で果樹の葉っぱや幹に付着させます。
薬剤を噴霧するための噴霧部、走行するための車輌、人が乗る車体、そしてエンジンに特長があります。
※「ステレオスプレーヤ」という名前は丸山独自の呼び方です。一般的には「スピードスプレーヤ」と呼ばれています。
薬剤を噴霧するポンプと送風機で構成されています。薬剤が均一に拡散し、樹いっぱいに防除できることがポイント。
果樹園の路面はオフロード。でこぼこだろうが傾斜地だろうが安定して走行でき、小回りがきいて効率よく走行できることが重要です。
今でこそ自走式があたりまえですが、わずか30年ほど前はティラーやトラクターによる牽引式でした。
圃場や地盤に合わせ、最適な走行形式を選べます。
■4WD(4輪駆動)軟弱地の走破性の向上[業界初!]
■6輪駆動 傾斜地の走行をより容易に
■4-6輪 後4輪の上下揺動で傾斜地悪路の走行を容易に[業界初!]
■4WS(逆位相同位角方式) さらにスムーズな小回りを実現[業界初!]
オープンタイプと、防除ヘルメットのいらないキャビンタイプがあります。
かつてのスキッドステアリングから、自動車感覚で操縦できる丸ハンドルが主流になっています。
開発当初は、走行駆動用、送風機・ポンプ用と2台のエンジンでした。1台のエンジンで、送風機の風量が調節できる多段ミッションを実現したのは丸山がはじめてでした。
開発会議風景
3次元CAD・シミュレーションの例
設計業務は100%CAD化済み
どのような製品がお客様から求められているのか、そしてどのような性能の製品を開発するべきなのか。これを明確にすることがすべての始まりです。
お客様の声、全国各地の拠点で営業担当が吸い上げたお客様ひとりひとりの要望やクレームなどが本社営業でまとめられ、用途、規模、価格の目標、コスト、機能といった形にブレイクダウンされ、技術部に投げかけられます。
技術部では、お客様の声という今の要望と長期的視野に立った技術動向を見極めながら、新製品の具体的な性能値や機能を検討し、形にしていくのです。市場ニーズに合わせるとどうしても製品は多様化してしまいます。ニーズとコストをはかりにかけながら、どれを標準機能にしてどこまでオプションで対応するか、これが技術者の悩みのタネなのです。
検討にあたっては、モックアップと呼ばれる縮小サイズの立体デザインや、3次元CADなどを使って、形、色、動きなどを細かく煮詰めていきます。形や色といったデザインは、数字だけでは決められないセンスが支配する部分であり、いちばんもめるところだったりします。
新製品の開発は、必ずチームで行われます。チームリーダは最初の会議から最終的な製品が仕上がるまで、全工程を把握しなければなりません。責任が重い反面、やりがいのある仕事です。
最近、力を入れているのは試作機のフィールド試験を実際のお客様の果樹園で行うこと。開発担当の技術者が試作機をもって全国数カ所の果樹園をまわり、お客様ご自身に使い心地を試していただくのです。
技術者の性として、ついついスペックの追求にはまりこみ、それをお客様の要望だと勘違いしてしまうことも多いもの。お客様の運転の仕方、果樹のつき方や植生、土壌の状態、満足度を自分の目でじっくり観察することを重ねていくうちに、いままで気付かなかったお客様の視点が少しずつ見えてきます。これが新しい製品開発への強い動機付けとなり、やりがいにもつながっていくのです。
デザインや機能などの仕様が決まったら、3次元CADやソフト を使って強度計算や流体解析シミュレーションを行います。
強度解析や流体解析が終わると、試作機、ひいては生産ラインにのせるための図面を起こす作業がはじまります。3次元CADから、生産用の2次元CADへ展開します。
性能試験には、社内で実施する機能試験・強度試験、専用の屋外試験場で行う耐久試験、そして 全国の既存顧客を巡るフィールド試験の三つに分けられます。
操縦に力を必要とするスキッドステアリングをご利用だったお客様が4WSを試乗したとき
「疲れてイライラ、おきまりの夫婦喧嘩がなくなりました」
防除ヘルメットをはじめて利用されたお客様
「ビールがおいしく感じられるようになりました」
棚式なのでずっとオープンタイプをご利用だったお客様
「棚式でもキャビンが使えるようになったんですね」
技術者が今でも「あれはたいへんだった」と述懐するエピソードをひとつ。
リンゴ園での試験中、50mほどの走行中、車体のわずかなでっぱりにあたってリンゴの実が5個落ちてしまいました。たかが5個かもしれませんがお客様にとっては大事な商品。
当時の開発チームはこの結果を重視し、車体のわずかなでっぱりをなくすためにデザインの変更を決意しました。いままでかかった作業時間とコスト、製品発表の予定などを考えると
「オレはよくクビにならなかった」と語るのは当時の開発者。今となっては笑い話ですが、この一件は丸山製作所の「よりよいものを作り上げるための頑ななまでのこだわり」を代表するエピソードとして語り継がれています。
昭和37年
・牽引式
・梨・ぶどうなどの棚作用
昭和47年
・自走式
・6輪
・傾斜地での走行用
昭和52年
・4輪
・車感覚で運転できる丸ハンドル
・平坦地用
・個人果樹園用
昭和54年
・4WD
・ディーゼルエンジン搭載
・バリエーションノズルで薬剤量の3段階調節・ワンタッチ切り替え可能
昭和58年
・4-6輪[業界初!]
・傾斜地走行用
昭和61年
・小回りに強い4WD+4WS[業界初!]